学校の一足制導入=人工芝生化? 子ども施策には、子どもの声を聴いて欲しい!

【学校は、子どもが長く過ごす子どもの居場所の一つ。「子ども抜きで物事を決めないで!」】
品川区教育委員会は、区立学校の校庭の人工芝生化をめざしています。
しかし、生活者ネットワークには、校庭人工芝生化になった学校に通う子どもたちから多くの意見が届きました。

「静電気が発生して、鉄棒や登り棒を触るとバチッと痛くて遊べない!」
「友だちにタッチした時にもバチッと痛くなる。」
「人工芝の破片や小さなチップが静電気で洋服にくっついて困る。家では洗濯の時に親から怒られるし、学校では先生から”チップを持って行かないの!”と言われるし。好きで付けてるわけじゃないのに!」
「運動会の練習の時に、人工芝が熱すぎて火傷しそうになった。」

静電気の発生や、強い日差しを浴びた人工芝の熱さ(一説には表面温度が60度にもなると聞きます。)については、”校庭を日常的に使用している子どもたちだからこそ、分かること”でした。
生活者ネットワークは子どもたちの声を基に調査を行い、2017年から校庭の人工芝生化の問題について議会で取り上げています。
問題点は大きく分けて、①校庭改築の時に人工芝生化するかしないかの議論に、子どもや保護者の参加の場が無い。②人工芝生化によるメリット・デメリットが示されない。この2点です。

「子どもたち抜きで勝手に決めないで欲しい!」という声は、調査をする中で子どもたちから聞かれた声です

区教委は、人工芝生化を進めたいのであれば、人工芝生化のメリット・デメリットを学校側に提示することが必要です。
そのうえで、学校として、校庭をいちばん利用する子どもたちを中心に、保護者・地域住民・学校で話し合い、校庭を人工芝生化するか、現状のままに留めるのか、結論づけることが必要だと考えます。

【校庭の人工芝生化のメリット・デメリット】
●メリット
・砂ぼこりが舞わない。
・少しの雨の後なら、少し人工芝が濡れた程度で遊びや運動が可能。

●デメリット
・運動会シーズン(4月下旬~)は日差しが強くなり人工芝が熱くなり、火傷しそうになる。
・静電気が発生し、登り棒や鉄棒に触れない。
・水以外の飲料が禁止になる。
・人工芝が折れるなど人工芝が損傷するという理由で、消防自動車などの重機が入れなくなる。そのため写生大会の中止や場所の変更が生じる。
・自転車教室(大人用・子ども用自転車の搬入や「死角」を想定した事故のシミュレーション用大型車両の搬入)も写生大会と同様で開催場所の変更や中止が生じる。
・餅つき大会も上記と同じ理由で校庭から場所が変わる。(人工芝では無い所へ移動)
・火気厳禁のため、地域イベントのお祭りで花火等ができなくなる。
・踏ん張る競技(綱引き等)は、人工芝がズレる可能性があるため避ける。
・人工芝が排水溝に詰まる。
・マイクロプラスチックが発生する。(人工芝の質や劣化状況によっては、服に人工芝の破片等が付着する。)
*品川区の河川マイクロプラスチック汚染状況は、株式会社ピリカ調査結果を公表しています。
*日商連が人口芝生によるPFAS汚染の可能性についても触れています。

…など。

【一足制の導入】
そのような中で品川区教育委員会では、突如、”一足制(学校へ上履きなどに履き替えずにそのまま入室する制度)”を鮫浜小学校で試験的に実施しました。
その結果、子どもや保護者から70~80%の賛同を得たということを根拠に、「今後は改築校や改築着手校で一足制を導入していきたい。」と説明しています。

2023年2月28日の文教委員会で区教委は、”校庭が人工芝生化していないと一足制導入は難しい”と説明し、校庭の人工芝生化=一足制になる可能性があることが示されました。

【学校から配布された突然の”一足制導入のお手紙”は、”校庭の人工芝生化”を意味するものだった。】
地域の方から問い合わせがありました。
・学校から一足制を導入するとお知らせを受けたが、導入理由が記載されていなかった。
学校に問い合わせをし、スペースの確保等の導入理由を確認したけれど、不明確なところもあり、教育委員会へ問い合わせを行った。そこで、校庭が”人工芝生化に進む”ことが確認できた。
未だに学校からは、校庭が人工芝生化になることについて、子どもや保護者に説明が無い

議会では、”人工芝生化している学校での一足制の導入”が示されています。
しかし、学校現場では、”一足制を導入する”ことだけが示され、その結果、校庭が子どもや保護者等にも示されずに人工芝生化になってしまうという、議会説明とは異なる現象が学校現場では起きていることが明らかになりました。

校庭の人工芝生化を進めるために、将来的に人工芝生化にしたいということを伏せて、先に一足制を導入するというのは手続きとしておかしいです。子どもや保護者、地域への十分な説明と議論が必要です。

上記でも示した通り、人工芝生化にはメリットとデメリットがあります。
また、今回の件では、子どもや保護者、地域に示されたのは”一足制の導入について”であり、まさかそれが校庭を人工芝生化することに繋がる問題とは、子ども・保護者・地域は誰も予想をしていないだろうと推測します。

残念ながらこれまでの調査からも、”校庭改築を機に人工芝生化したい区教委”と、”区教委の意向に対し、対等に意見することができない学校”の構図が透けてみえてきました。
今回の件でも、区教委のトップダウンの体質と区教委と学校の間の風通しの悪さが未だに改善されていない。と思わざるを得ない事態です。

今回の人工芝生化に向けた”異例な進め方”は、マイクロプラスチックを排出してしまう人工芝生化に疑問抱き、議会で取り上げる議員が生活者ネットワーク以外にも増えてきたからではないか?と推察します。

私の思い違いであると思いますが、人工芝生の「マイクロプラスチック問題」がピリカの調査等からも表面化し、周知されてきたため、人工芝化を前面に出すとリスク(批判)が生じると考えた。
そこで、「一足制の導入」を挟み、表面上には分かりづらいように人工芝生化を進めようとしたのではないか?
…と、私は勘ぐってしまいました。

また、「一足制導入」では、新たに指定靴(指定された商店で、子どもは一律同じ靴にそろえる)が併せて導入される可能性も拭えません。
これまでは個々が自由に購入できていた上履きや外靴が、指定靴に変わるかもしれない。
または新たに「体育館履き」などの指定靴の導入の可能性も考えまれます。
それらの可能性も含めて子ども、保護者、学校で十分に話し合うことが重要だと考えます。

【人工芝生化に向けたこれまでの流れ】
①区教委が校庭改築が必要な学校長に「人工芝生化」を資料を持って示唆する。

②区教委からの意見を受け、「校庭を人工芝生化する」という前提のもとで、学校と一部のPTA、町会長で話し合いが行われる。
この会議をもって”保護者と地域の了承を得た”という形になり、区教委から議会に向けて説明がされる。

③校庭人工芝生化が完成。
人工芝生化された後に、人工芝生を利用するにあたっての禁止事項が子どもや保護者、地域に示される。
その禁止事項に驚いた保護者や地域住民から、生活者ネットワークに相談という形で声が届く。

【東京都では、校庭を芝生化する補助金を出している】
東京都は、子どもの学ぶ意欲向上や地域との絆づくり等を目的に「緑の学び舎づくり事業」を実施しています。
校庭の改築を考えるときには、東京都が補助金を出している芝生化についても検討項目として取り入れてもよいのではないでしょうか?なぜ、人工芝生に固執するのか?区教委の目的が分かりません。

さらに、デメリットであり、子どもたちにとっていちばんの大きな課題である静電気の発生や日差しによる蓄熱の問題は、「水を撒く」以外の解決方法を見いだせていないのが現状です。

校庭の人工芝生化と一足制の問題をはじめ、子どもに関わる施策は子どもと一緒に決めるべきです。
子どもの権利を保障し尊重するまち、品川となるように引き続き求めていきます。