【高校入試英語スピーキングテスト(ESAT-J)】は中止を!個人情報の取り扱いや、公平性の観点などに大きな課題。
高校入試に向けて子どもや保護者の不安が高まる時期に、さらなる不安材料として子どもや保護者にのしかかっているのが、英語スピーキングテストの『ESAT-J(イーサット・ジェイ)』です。
品川区教育委員会では、小学校からの英語教育とともに、ESAT-Jを運営する(株)ベネッセコーポレーションの民間試験「GTEC」を2014年(平成26年)から実施しています。
2019年(令和元年)から東京都教育委員会がESAT-Jプレテストの実施校を募り、その際にも品川区教育委員会は手を挙げ実施しています。
2022年の1学期が終わるころに各中学校の9年生とその保護者が対象で、7,8年生の保護者も参加できる進路説明会が開催されました。
出席した9年生の保護者からはESAT-Jに対し、情報漏洩や、テストの不平等さに対する大きな不安や懸念の声があがり、説明をする教員に対し「先生たちからも東京都教育委員会へ中止を求めて欲しい!」と要望する意見が上がりました。
私も同年代の子どもを育てる保護者の一人として、皆さんの不安と訴えは痛いほどによくわかります。
高校入試 英語スピーキングテスト(ESAT-J)の問題は、都議会でも大きな議論となり、都議会・生活者ネットワーク岩永やすよ都議を含む6会派42名の議員が参加して「英語スピーキングテストの都立高校入試への活用中止のための都議会議員連盟」を発足させるほど大きな問題となっています。
品川区議会では、当該の文教委員会でもなかなかこの問題は取り上げられてきませんでした。
私が所属する文教委員会(9月16日開催)で進路説明会の様子や、受験生とその保護者の不安な思いを共有するために、高校入試 英語スピーキングテスト(ESAT-J)を、「その他」(委員会の審査予定一覧にないものを討議できる機会)で質問をしました。
◎委員が「知らない」?高校入試 英語スピーキングテスト(ESAT-J)の問題
結論から言うと、文教委員会での「その他」でのやり取りは、質問と行政答弁がかみ合わず、委員とも問題点を共有出来ませんでした。
以下委員会の様子です。
「子どもや保護者から、情報漏洩や、テストの不平等さ等を訴える不安の声が教育委員会に届いていないか?」という私の問いに教育委員会は、
①品川区では小学校1年生から英語教育を取り入れ積み上げ、定期的なパフォーマンステスト、外部業者のスピーキングテストもやっているので円滑である。
②個人情報の取り扱いについて、前年度、前々年度と東京都が指名したモデル校、一部の学校でこういった個人情報に不備がないかどうかといったところも含めて、都教育委員会のほうでやってきた経緯がある。そこの部分においてもしっかりできている。
(注:委員会後に担当課から連絡があり、「この時の説明はプレテストの実施状況を指しており、プレテストで情報漏洩等も含めた確認を行っているということ。答弁が不十分だったため次回の委員会で答弁の修正を含めて説明をする。」とのことでした。)
③保護者等から寄せられている声は、申請の方法が分からないなどの相談。
9年生の申請はほぼ済んでいる。しかし、何人かのお子さんや家庭で登録し忘れている方に、追加のご案内をするなどやり方も含めてアナウンスをしている。
保護者等の当事者が訴える情報漏洩や、テストの不平等さについての懸念、中止を求める保護者の声には触れられませんでした。
つまり、進路説明会等で寄せられた当事者の声は、<教育委員会には届いていない。>という答弁です。
保護者のESAT-Jに対する中止を含めた意見は直接、学校現場から都教委へ意見要望ができるのか、区教委を介してすべきものなのか等、確認すべき点はありますが、いずれにしてもこのように現場が混乱している状況を、区教委が把握できていないということに、子どもたちの学びを守る責任のある立場として重大な問題を抱えていると感じます。
冒頭にも記述した(株)ベネッセコーポレーションの民間試験「GTEC」の状況について確認をしようと質疑をした時に公明党の若林委員から、
「(若林委員自身が)予備知識も無いし、個別の企業の名前が出てきたりなど質疑を整理して議事進行を進めて欲しい。」と、文教委員会委員長に求められてしまいました。
また、自民党のW委員が「(ESAT-Jの問題を)知ってる?」と、9年生の子どもがいる自民党 M副委員長に投げかけ「いや、全然知らないです。」と答えるやりとりも聞こえてきました。
公明党 若林委員の発言も含め、
これだけ受験生やその保護者が不安を抱いている深刻な問題で、都議会や報道でも取り上げられている課題に対して、都議会にも大きな会派を持っている議員さえもESAT-Jの問題を”知らなかった”という文教委員会の現状は示しておきたいと思います。
11月には本格的にテストが始まってしまいます。
先日、第2回目の秋の進路説明会が行われた際にも、保護者からはESAT-Jへの不安や、11月の試験会場等の詳細を聞きたい。という声があがりました。
しかし、試験会場は示されず、詳細についても「分かり次第伝える。」という学校の説明に、「会場の下見もできず不安。」「もう試験は来月に迫っているのに詳細も示せないのであれば、もう中止して欲しい。」など、保護者の不安は一層高まっています。
試験目前の2回目の進路説明会での様子について区教委に確認したところ、
❶秋の進路説明会でESAT-Jについて意見があがったのは中学校1校のみ。
❷試験会場はまだ東京都から示されていない。
❸次回の文教委員会で、前回の答弁の修正を含めて説明をする。…とのことでした。
生活者ネットワークには複数の保護者から不安の声が届いていますが、区教委にその声が届いているのは1校ということに、不安の声を届けられない状況があるのではないか?または、届けた声が反映されていないのではないか?と心配になりました。
国は3年前、大学入試共通テストへの英語民間試験の活用について、公平性などの問題で批判が広がり導入を見送りました。必要な見直しは不名誉なことではありません。
子どもたちの学びの場を保障するためにも、ESAT-Jの問題点が共有され受験生の不安が解消されるように、品川区教育委員会には東京都教育委員会に中止の要望をするよう改めて求めていきます。
そして、生活者ネットワークは引き続きスピーキングテストの中止を訴えていきます。
皆さんのご意見、お寄せください。
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