突然の方針転換。ひろまち保育園閉園について

渋谷区の”景丘の家”に視察へ。「子どもと食」をテーマにした多世代交流の場です。

●品川区の政策決定過程は不透明
生活者ネットワークはこれまでも品川区に対し、政策決定の経過を明確にするよう求めてきました。
今年の夏に突如起こったひろまち保育園の閉園決定についても決定過程が不明瞭でした。

●ひろまち保育園閉園については、広町地区の再開発事業が関係
当園は待機児童対策のために5年の期限付きで2016年に開園しました。
開設当初、議会では「ひろまち保育園の延長はあり得る」「入園児全員が卒園できるように」という主旨の説明がありました。
品川区議会第2回定例会の一般質問に登壇した議員によれば、今年6月まで品川区は、「今後の方針は未定」としていたといいます。が、方針が一変します。
6月からたった2か月しか経っていない今年8月に区は、事業者に閉園決定を通知し、保護者には10月の入園申し込みに先駆けて優先転園の働きかけを行います。
これでは今までの議会説明とは異なります。

全卒園方針の転換や、閉園決定がいつ決定したのか、決算特別委員会で質したところ保育課長は、
「開園当初から方針に変更はなく閉園決定は7月の建設委員会で再開発事業の進捗が報告されたことを受けて」と答弁しました。

保育園のことが議論される「文教委員会」では、建設委員会の報告を受けた1か月後にひろまち保育園の閉園が報告されています。

広町地区に土地を持つJRと品川区の都市開発課は、広町再開発の共同検討を行っています。
その中でJRの事業着工予定2021年という決定を受け、都市開発課から「再開発が進む」と報告を受けた保育課は期限の延長を諦めたと言います。
再開発検討の中で、保育課に発言権がなかった事実が決算特別委員会の中でも明らかとなりました。

この一連のことから品川区がまちづくりや区政の中で、
子どもや子育て世代に関心を寄せていないと私は感じました。

保育課の言う「ひろまち保育園を当初から5年で閉園としていた」のであれば、
入園手続きにおいて「卒園できない可能性」を前面にに保護者に打ち出すべきでした。
突然の閉園に驚く保護者の声から、入園手続きに齟齬があったと感じています。

区の政策決定が不透明であることは否めず、ひろまち保育園に通う子どもや保護者はその被害者と言えます。

●ひろまち保育園の閉園は、そこに通う人以外にも影響を及ぼしている
通園している子どもたちを優先枠を設けて責任を以て転園できるようにすると区は言いますが、例えば、認証保育園を利用する子どもや保護者は閉園の影響を受けることにつながりかねません。
大規模保育園であるひろまち保育園の閉園により、3歳児の保活がますます厳しくなるのではと不安を募らせています。行政には政策判断の説明責任があり、特に影響を受ける当事者へ説明を果たし、細かな配慮をおこなうべきです。

●ひろまち保育園の閉園報告からのこれまでの流れ●
・8月20日 ひろまち保育園園長と事業者へ保育課から閉園についての報告
・8月26日 文教委員会で閉園について報告
・8月28日 保護者へ閉園を知らせる通知を配布
・9月5日 在園児保護者説明会
・9月9日 転園相談窓口設置(4月優先入園枠)
・9月24日 転園申込み締め切り
・10月17日 一次選考結果発表・二次選考申込み受付開始~…

連休を挟んだこの日程は、就労する保護者の立場を考えているとは思えません。
転園申請書には、転園希望園を20か所も記入する枠が用意されています。そして、転園相談窓口では、全てを埋めるように急かされると聞きます。

●保護者は他の保育園へ見学に行く時間も無い状態の中で20か所園もの記入を強いられる
入園を広い範囲で広げられるように」との区の思惑は、転園で子どもが過ごす園の環境を確認できない保護者にとって不安でしかなく、子どもにとっても環境の変化は酷なことです。
この間の区の閉園決定のすすめ方は、待機児童対策を行ってきた区への信頼を損ねており、とても残念に思います。

(田中さやか)