都知事選から見えた日本社会の歪み。私たちが戦う相手は?~羽田新飛行ルート問題 障がい児者と子どもへの被害と、Q&A~その3

前回の記事、都知事選から見えた日本社会の歪み。私たちが戦う相手は?~白い服の政治的意味・教科書採択・羽田新飛行ルート問題~その1 ~教科書問題と憲法改悪~その2の続編で、羽田新飛行ルート問題について報告します。

練馬区・江戸川区目黒区・中野区・品川区の生活者ネットワークメンバーが参加しました!

2024年7月18日(木)羽田新飛行ルートが本格実施してから4年が経過し、かねてより自治体間の議員との連携を図りたい考えていたことが実現しました。23区内の関係自治体議員が集う交流会が品川区議会羽田議連の呼びかけで開催されました。

南風が吹くこの季節には、品川区の上空には耐えがたい大きな音が鳴り響きます。

集会を前に、きゅりあん前で上空を飛行する飛行機の騒音を耳にした他自治体議員は皆、「羽田新飛行ルートの騒音は、自分の区は酷いと思っていたけれど、品川区の騒音とは比べ物にならない。想像以上に酷い。」と口をそろえました。

会場には11区から43人の現・前・元区議と住民団体や市民の15人がオブザーバーとして参加し、58人もの人たちが関心をもって集まりました。
北風運用時に騒音被害を受けている江東区、江戸川区をはじめ、各区の報告で共通していたのは、➀新飛行ルートの影響を受ける地域と、そうでない地域で、課題意識に温度差がある。
②すでに運用されている状況から諦めている人が多い。…ということでした。

細野かよ子中野区議会議員も報告しました。

影響のある地域とそうでない地域で温度差があるというのは、品川区内でも感じるところです。しかし、ここで忘れてはいけないことは、ゴーアラウンド(やり直し)の影響です。
ゴーアラウンドは、新飛行ルート上とは関係なく実施されます。そのため、ルート下にかかるか否かという問題では無く、品川区内をはじめ東京全体に影響が起こるということです。なので、誰もが自分事としてこの問題をとらえる必要があると思います。

やない克子山崎まりも練馬区議会議員も報告しました。

【羽田新飛行ルート問題で忘れてはいけない子ども・障がい児者への影響】
交流会の場では、残念ながら羽田新飛行ルートが子どもや障がい児者に与える影響について言及する方はいませんでした。品川・生活者ネットワークは、子どもや障がい児者に与える影響を調査し言及してきたため、この視点を共有しました。

〇子どもや保護者、保育者等から寄せられる声
・乳幼児は昼寝をしていても、騒音に身体をビクッとさせる。
・睡眠・休息・遊び・学び・運動などの時間に集中ができない。機体の大きさが怖い。墜落しそうで怖い。
子どもが近くの大人(保護者・教員・すまいるスクールスタッフ等)に騒音などの被害を訴えても、その先に繋がらず、子どもの声が行政に届かない状況がある。

(関連記事→【各議員の賛否掲載】羽田新飛行ルートの影響について、航路下の子どもを含む住民を対象に実態調査(アンケート)と結果公表を求める陳情に賛成討論しました。

〇障がい児者と、ケア者から寄せられる声
・発達障がい者は騒音でパニックになり失神する被害があった。聴覚障がい者は音が聴こえなくても音を振動で体感するため、騒音の影響を不快に感じている。騒音や機体の大きさ、墜落等のリスクから精神疾患を発症。
・視覚障がい者は日常生活に命の危険が迫っている。
・視覚障がい者の立場から、「羽田新飛行ルートの賛否を問う区民投票条例制定」を求める請求代表者の意見陳述に立った市民の動画は以下からご視聴できます。
品川区議会HP 2020年(令和2年)第3回臨時会12月25日 本会議

【羽田新飛行ルート問題に関して、よく聞かれるQ&A】
品川・生活者ネットワークHPでも報告をしていますが、改めてここでもお知らせします。

Q.円安によるインバウンドと経済効果のためにも 増便のために羽田新飛行ルートが必要なのでは??
A.よくある誤解です。実は、従来ルートで増便できる新航空管制方式が 2020 年 11 月に確立され、既に運用されています。つまり、羽田新飛行ルートは不要であることは明確です。

Q.騒音には困っているけれど、羽田新飛行ルートが運用されてから 4 年も経つし、諦めるしかないのだろうか。
A.政府は、市民が声を挙げなくなることや、諦めることを「容認した」と同意語に判断します。 民主主義を終わらせない。市民自治を実現するためにも、 各々が自分の権利を主張し続けることが重要です。

Q.2022年3月13日、渋谷区のテニスコートに氷塊が落下しました。原因究明はされたのか?国交省は調査したのか??
A.国交省は、氷が溶けて無くなったことや、飛行経路から350m離れていたことを理由に3月18日には調査を打ち切りました。2017年に大阪で起きたパネル落下事故は、航路から約3.7km離れた場所に落下し、重大インシデントとなっています。氷塊落下で原因究明をしなかった国交省の姿勢から、“明らかに飛行機からの落下物”と判明しない限り、“落下物を認めない”ということが明らかとなりました。

Q.羽田新飛行ルートの騒音などの対策のために「固定化回避検討会」が設置されたから心配することないと聞くが?
A.固定化回避検討会で議論されていることは、国際的ルールにも適さない現実的に不可能な案ばかりです。詳しくはこちらの記事をお読みください。
固定化回避検討会は、2022 年 8 月以降開催されておらず、次回も未定の状況です。固定化回避検討会が続く限り、都心上空の羽田新飛行ルートの固定化が継続されることになります。

生活や命に大きな影響を与えている羽田新飛行ルートは、撤回・中止以外に選択肢はありません。引き続き生活者ネットワークは撤回・中止に向けて活動をしていきます。
皆さんの声を、お寄せください。

田中さやか