NPO法人「教育サポートセンターNIRE」に伺いました。

この冊子は、1999年10月に調査が行われ、子どもたちとの座談会や自治体の取り組みなども掲載されています。(2000年2月初版発行)

この冊子は、1999年10月に調査が行われ、子どもたちとの座談会や自治体の取り組みなども掲載されています。(2000年2月初版発行)

例年、品川・生活者ネットワークでは市民からの政策要望という目的で、様々な人たちから意見をいただき、「品川区予算への市民からの提案」にまとめ、区長あてに意見交換をしながら届けています。

一連の活動の中で、同団体にヒアリングをお願いし、5月30日に中延にある事務所にお邪魔しました。

「教育サポートセンターNIRE」では、特別な教育的ニーズを持つ子どもたちの支援のためには、その子自身が自分の特性をよく知り、自信を回復しながら自分の特性を活かすような適切な教育的サポートが必要であるという理念を持っています。そして子どもたちの豊かな成長と自立には、地域のネットワークづくりを進めることが大事という考えのもと、市民による非営利の社会貢献活動を優先し、特定非営利活動法人として「教育サポートセンターNIRE」を設立しました。

具体的な活動として、LD(学習障がい)やADHD(注意欠陥多動性障がい)、アスペルガー症候群といわれる軽度発達障がいのある、特別な教育的ニーズを必要とする子どもたちへの学習支援や、生き辛さを抱えた子どもや若者を対象にした体験学習プログラムなど、総合的な支援事業をおこなっています。

 通常の学習支援や、田植えや稲刈りといった農業体験などを通して、子どもたちと多くの時間を過ごしているNIREのスタッフからは、子どもたちのリアルな現状を伺いました。

例えば、
・学校現場では「みんな同じで一緒」の型から外れてしまう子は、変わった子、できない子だと判断されてしまうこと。
・ひとり一人の学習の困難には目が向けられず、個々に合わせるのではなく、できる子といわれる水準を一律に求められること。

 

悩みや問題は子どもだれもが抱えていると思いますが、子どもたちに居場所を提供し、なにより子どもたちひとり一人の個と真剣に向き合うNIREのスタッフの姿勢は、子どもにとって、とても心強く心のよりどころになっているのだろうと思われました。

他方、居場所はあっても、費用負担が重荷になり、子どもたちが学習支援やプログラムに参加できない現実もあるようです。学習支援の成果が見られても、費用を考えると回数を減らさざるを得ないとか、泊りも兼ねた農業体験は経費が出せないなど気になります。

必要なところに必要な支援が届くしくみや、市民が協力できる体制づくりも望まれます。子育ち・子育てを応援する地域社会のあたたかいまなざしと行政の制度的な後押しが実現するように提案をしていきたいと思います。

 

ヒアリングを終えて、東京・生活者ネットワークが2000年2月に発行した「子どもと未来をきりひらこう『子ども人権調査のまとめ』」を改めて読みかえしました。
子どもの権利条約が国連で制定されて10年、日本がこの条約を批准(1994年)して5年が経った頃に発行した冊子です。

この冊子にまとめられた調査は、子どももおとなも、気づかずに権利を侵害されていたり、侵害している状況が、まだ多いと思われる中で、子どもの権利、子どもの自立についての意識と実態を、子ども3298件、おとな4020件から回答を得てまとめたものです。東京都に子どもの権利条例を提案するための、調査であり、条例の内容にいかすことを目的にしていました。 

読み返してみて、子どもたちが置かれている状況は、2000年当時の調査からみられる実態と、条約批准後20年経った現在も、課題は同じであり、改善がされていないことがよくわかりました。

子どもに係わる困難や課題・サービスは確かに細分化されてはいますが、しかし、むしろ現在の方が、企業が担ってきた福利厚生が衰退し、国の社会保障も減少の一途で、さらに、核家族化の拡大や子育て世代の孤立化で子どものいる家庭の状況が見えにくくなっています。6人に1人が貧困家庭であるという現実からも明らかなように、生きづらい状況に置かれている子どもたちが増えているといえます。 

 

私は、子どもたちがありのままの自分を認められ、いきいきと個性豊かに育っていける社会になればいいと切に願っています。子どもを保護の対象としてだけとらえるのではなく、「子どもの権利条約」にうたわれている「子どもの最善の利益」を常に念頭に置き、「子どもの基本的人権の確立」「子どもの自立・子育ちの応援」「子どもとおとなのパートナーシップ」を実現する政策の提言をめざします。 

<品川・生活者ネットワークからのご案内>
品川区の公教育を考える学習会を今週土曜日6月18日に開催します

日 時:2016年 6月18日(土)10:00~12:00
会 場:大井町きゅりあん 5階第2講習室
      JR京浜東北線、りんかい線、東急大井町線
      大井町駅徒歩1分 (℡03-5479-4100) 

講 師:藤田 英典さん/共栄大学教授 

参加費:無料
申込先:品川・生活者ネットワーク
電話 03-5751-7105
    FAX 03-5751-7106
    Eメール:shinagawa@seikatsusha.net

講師プロフィール
共栄大学教育学部教授、東京大学名誉教授、前日本教育学会会長等。専門は教育社会学。教育改革国民会議委員(2000年)、中央教育審議会・義務教育特別部会委員(2005年)等を歴任。『教育改革のゆくえ:格差社会か共生社会か』(岩波ブックレット2006)、『安倍「教育改革」はなぜ問題か』(岩波書店2014)他。