自民党憲法改正草案の“正体“を見据える! 講演とトークセッション
去る4月11日、大井町きゅりあんで、神奈川大学法学部准教授の金子匡良さんを講師に迎え、7月の参議院選挙に挑戦する大河原まさこさん(前参議院議員)を再び国会へと、大田・目黒・品川で活動する勝手連の皆さんが主催する標記の集会が開催されました。
安倍政権の目論む憲法改正に危機感を感じたことが、議員となることを決意したきっかけの一つでもあった私でしたので、この日の学習会はたいへん有意義なものとなりました。かつ、国会内の改憲勢力3分の2を阻止するためにも、東京・生活者ネットワークの元代表委員でもある大河原まさこさんを、なんとしても国会に送り出したいという思いも強くした集会でした。
そもそも「憲法」とは、人権保障を基盤に、立憲主義を実現するために制定された国の最高法規であり、国家権力者が権力を濫用しないよう制限をかけるためのものです。
権力者は「法に支配されようとする意志と行動」が求められ、国民には「法に支配されようとしない権力者を排除しようとする意志と行動」が求められる、と憲法を有効に機能させるための必要最低限のルールを、金子さんは講演の最初に話されました。
ところが今、この立憲主義の原則を理解しない、あえて法の支配を無視しようとする安倍首相を中心とした与党議員が増えているために、憲法の破壊、立憲主義の危機が起こっています。一方で国民の側も立憲主義を守らせるよう権力者を監視しなければいけないにもかかわらず、その監視を怠ってきたのではないか? という指摘に、私自身もその事実を重く受け止めました。
自国の憲法を十分に理解して、子どもを含む自身のために最大限に活用できるのが憲法。しかし今、その活用が充分できているでしょうか。ならば立憲主義を実現するために、市民が日本国憲法を読み、理解を深め、行動を起こしていかなければならないのだと、改めて痛感しました。
憲法を紙に書かれた、ただの文字にしないために、立憲主義を実現するための基本は3つ。
- 人権の保障→国家権力の行使は国民の人権を侵害してはならない
- 権力分立→法律の制定・法律の実行・法律による紛争解決は、別々の国家機関が行わなければならない
- 民主主義→国の運営は、国民の意思を反映しなければならない
この大切なことが、自民党憲法改正案ではどのように変えられているのでしょうか。条文の言葉を一字でも変えるということは、法学の世界では「意味・解釈が変わる」という意味を持つそうです。例えば、現行憲法13条は、憲法の中で一番大事な条文だと、金子さんは言います。
【現行憲法13条】
すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
自民党憲法改正草案の13条では、個人は人へと変わり、公共の福祉が公益及び公の秩序へと変更されています。
金子さんいわく、個人と人の違いは一見、特に問題もなさそうに思われるかもしれないが、「人」では生物としての人であり、一人ひとりの「個」が尊重されなくなる恐れを含んでおり極めて危険である、ということでした。
2005年の小泉政権時に公表された「新憲法草案」は、まだ立憲主義を理解した範囲で作られていたが、しかし今回(2012年)の「自民党憲法改正草案」では、非・反立憲草案となっており、これでは戦前・戦時下の明治憲法に逆戻りであると警鐘をならされました。
さらに現行憲法の9条2項を全て書き換え、軍を持つ条文を加えている部分や、第21条に付け加えられた集会や活動を制限するような2項の部分の追加。第18条の奴隷的拘束及び苦役からの自由では、政治的、軍事的な関係などで拘束されてしまう可能性のある表現にかわっていること。第98条の緊急事態条項の追加…などなど、危険極まる改憲思考がたくさんあることも理解しました。
憲法議論を封印しようというつもりはありませんが、「権力者をいさめる憲法を権力者が勝手に変えられる国会構成」にしてはならないということだけははっきりしています。国の行方を180度転換してしまうほど大事な参議院選挙が近づいていることをおおぜいの人と共有していきたいと思います。<たなか・さやか>