『おもてなし』を強要する条例はアリ? ダメですよ。

市民と議会の条例づくり交流会議2015に参加。2000年の地方分権一括法を機に01年、各地で課題解決に取り組む市民、議員、自治体職員や研究者らが集い知恵や経験を共有し提起し合う場です。今年で15回目を迎えました。(2015.7.25法政大学)

 ★1126日、区議会定例会本会議で、新人議員として初の一般質問を終え、委員会などが召集されている昨日今日です。一般質問では、「すまいるスクールの有料化に伴う減免策」「総合教育会議など当日配布資料の公開」等々を問い、いくつかの言質を得ていますが、一方、今後上程が予定される「いじめ防止対策推進条例」にかかる質疑では、教育行政をつかさどる立場とは到底思われない「(予定する条例は)子どもの権利条約とは関係ない」発言が飛び出すなど、あまりの見識のズレに、こちらがたじろいでしまうほど驚かされた場面も。一般質問の経緯については近日にご報告させていただきますとともに、今回の一般質問での質疑内容を吟味し、今後のフォローアップにつなげていきたいと考えているところです。

★★さて、議員提出議案による、「品川区おもてなし条例(案)」が、最大会派“自民党・子ども未来”から提出されています。先日行われた議会運営委員会でのことで、提出者は自民、賛同者も自民議員のみという議員提案です。提案趣旨は、2020年東京オリンピックに向けて、品川区でこの条例が必要だというもの。
同条例案は区民委員会に付託されたことから、私、田中さやかの在籍する委員会での審査になります。

このところ、観光地を有する地域で同様の県条例などがみられますし、外来者に対してもてなしたい気持ちは、大切でしょう。ですが、そもそも「おもてなし」は、誰かから、ましてや議会や行政機関から強要されるようなものでしょうか? 条例文案の前文に示されているような、「私たち一人一人が区に対する誇りと愛着を持ち、おもてなしの心で来訪者を受け入れることが重要です」などと、上から目線の押し付けを条例で規定することには、非常に問題があると私は考えます。

同様に、条例第2条の定義の一つに、「おもてなし活動は、『区民等が互いを尊重し合い、区に対する誇りと愛着を持ち、来訪者を温かく受け入れるための取り組み』をいう」とし、第3条基本理念では、「おもてなし活動を推進するための取り組みは、区、区民等、および団体の相互連携・協力により、区の自然、歴史、伝統、文化等(以下「区の伝統文化等」という)に対して区民一人一人が理解と関心を深め、区に対する誇りと愛着を持つことが重要であるとの認識の下に実施しなければならない」と、畳み掛けています。

このように、前文、基本理念、各条文の下、区の示す「おもてなし活動に関する施策に積極的に参加し、区の魅力を発信。区の伝統文化を継承するよう努めるものとする」のだそうです。個人の思想信条にまでも平然と踏み込んで疑わない、このような条例案を議員の全員協議会で議論することもしないで、突然提案し、文言修正には応じないという自民党会派の強硬な姿勢に驚きを禁じえません。生活者ネットワークは、何とか議会での協議ができないかと他会派とも相談したのですが、思うようにはいきませんでした。

品川は商店のあるまち、商店街が元気なまちでもあります。接客に誇りを持ち、「親しみやすいまち・品川」を実践している商店街の方々、店主のみなさんの様子に、私はなじんできましたし、よく知っています。条文には、「交易の拠点でもあった品川区には、長い年月を経ておもてなしの心が根付いています」という一文もあるのですが、「一生懸命、お客様に喜ばれる心遣いを!」と、日夜奮闘している商店の方々の顔が浮かび、この(「押し付け」が否めない)条例を読んだ時にどんな気持ちをされるだろうか…と。実際、商店の方々に意見を聞いたところ、予想通りの(何をかいわんといった)反応が多く返ってきました。商店以外の方からは、「愛着とか誇りって、言われて持つものではないよね…」「~しなければならない・・・っていったい何?」などのご意見をいただきました。いただいた声をもとに、区民委員会の審議に臨みます。

★★★条例は、市民の暮らしが円滑に行なえるよう市民・行政・事業者などが共有する、いわば「社会の約束」です。子どもの学んだり遊んだり休息する権利を保障する条例、子育てを支援する条例、障がい児・者の権利を保障する条例など、市民社会が求めている条例は多岐にわたることも、もっと共有していくときではないでしょうか・・・考えるところの多い、一般質問、そして委員会活動です。忌憚のないご意見を、品川・生活者ネットワークと田中さやかにお寄せください。<たなか・さやか>